2025年6月18日、イラン最大の暗号資産(仮想通貨)取引所「Nobitex(ノビテックス)」が大規模なサイバー攻撃を受け、約9000万ドル(約130億円)相当の資産が盗まれたことが明らかになりました。
犯行を認めたのは、親イスラエル系のサイバー攻撃グループ「Predatory Sparrow(プレダトリー・スパロウ/肉食スズメ)」であり、X(旧Twitter)を通じて犯行声明を発表。声明には、イランが国際制裁を回避するためにNobitexを利用しているという主張も添えられていました。
通常、サイバー犯罪によって盗まれた暗号資産はマネーロンダリングや転売を目的に使われます。しかし、今回の事件では異例の対応が取られました。
複数のブロックチェーン監視企業(Elliptic、TRM Labsなど)によると、犯人は盗んだ資産を自らもアクセス不能な“バーンアドレス”に送信したとされています。これは技術的には資産を消滅させる行為であり、「金銭的利益」ではなく「象徴的メッセージ」を重視した政治的・心理的なサイバー攻撃であったことを示唆しています。
盗難された資産の一部は、イラン政府の軍事組織であるイラン革命防衛隊(IRGC)を侮辱する内容が埋め込まれたウォレットへと移されました。
また、プレダトリー・スパロウは前日の6月17日には、イラン国営銀行「セパ銀行」の内部データに破壊的な攻撃を仕掛けたと発表。同行はIRGCと取引関係にあるとされており、明確な政治的標的があったことがうかがえます。
加えて、イラン国営放送局では一時的に放送が停止され、政府批判的な映像が流れるなど、情報インフラへの攻撃も確認されています。
テヘラン在住の男性はCNNの取材に対し、「17日と18日に10カ所以上のATMを回ったが、どれも稼働しておらず、現金も入っていなかった」と証言。サイバー攻撃が一般市民の金融アクセスにまで影響を及ぼしていることが明らかとなりました。
特に、政府による金融規制を逃れる手段としてビットコインなどの仮想通貨を日常的に使用していた層にとっては、今回の事件は資産喪失だけでなく、「経済的自由の侵害」にもつながる重大な出来事となっています。
サイバーセキュリティ研究者のハミド・カシュフィ氏は、「このような攻撃は、国家間の軍事的衝突の一形態であり、一般市民を巻き込む心理戦の要素も強い」と述べました。
専門家の多くは、プレダトリー・スパロウがイスラエルの諜報機関と非公式なつながりを持つ可能性が高いと見ています。近年のサイバー戦争は、従来の物理的戦闘とは異なり、国境を越えて迅速かつ目に見えない形で被害を及ぼす新たな戦争の形態となっています。
今回の事件は、仮想通貨インフラがいかに国家レベルのサイバー攻撃に脆弱であるかを露呈しました。また、暗号資産が地政学的リスクに直結する時代に突入したことを象徴しています。
イラン政府は現在、Nobitexへのアクセスを遮断し、国内金融ネットワークの防衛体制を見直していると報じられています。一方、一般市民や中小企業においては、暗号資産の利用に際してより高度なセキュリティ対策が求められるようになるでしょう。
国際的には、サイバー攻撃に対する法整備と国家間協定の強化が急務となっており、今後の金融安全保障の在り方に根本的な変化をもたらす可能性があります。
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イラン最大の仮想通貨取引所Nobitexがサイバー攻撃を受け、約130億円相当の資産が盗難・焼却。犯行声明を出したのは親イスラエル派のハッカー集団。影の戦争が新たな段階へ。
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