米国で、人工知能(AI)を悪用した偽装事件が発覚しました。何者かがAIで作成した偽の音声を使い、アメリカの国務長官になりすまして、複数の国の外相や政府関係者に接触していたことが明らかになり、サイバーセキュリティと外交の信頼性に対する深刻な懸念が高まっています。
2025年7月8日、アメリカの複数のメディアやロイター通信は、正体不明の人物がAIで生成した音声を使って、米国のマルコ・ルビオ国務長官を装い、外国の外相3人と米政府関係者2人に連絡を取っていたと報じました。これらの連絡は、シグナルという暗号化メッセージアプリを通じて行われ、音声メッセージのほか、連絡を促すテキストメッセージも含まれていました。
外交文書によれば、この人物は6月中旬、外相や議員、州知事などに対し、信ぴょう性の高い音声と共にコンタクトを試みており、少なくとも2人に音声メッセージが残されていたとされています。
同日、アメリカ国務省のマシュー・ミラー報道官は記者会見で「報道された内容は事実」と認め、現在調査を進めていると明言しました。
「我々は情報の保護に最大限の責任を持って対応している。今後の類似事案を防ぐためにも、サイバーセキュリティ体制の継続的な強化に取り組んでいく」と述べました。ただし、メッセージの具体的な内容や標的となった人物名については「捜査中のため明かせない」としています。
この事件は、ディープフェイクやAI音声生成技術が、サイバー犯罪や政治的な工作に利用され得るという現実を浮き彫りにしました。
3日付の米外交公電では、「生成された音声やテキストメッセージは、標的の人物を操り、機密情報やアカウントへのアクセスを得ることを目的としていた可能性が高い」と記されており、情報漏洩リスクへの懸念も強調されています。
AI技術の発展に伴い、視覚や聴覚を欺くコンテンツが極めて自然になり、ソーシャルエンジニアリングの手法も巧妙化しています。今回のような「ハイテク詐欺」は、国家間の信頼や外交プロセスを破壊するリスクすらはらんでいます。
実は、今年5月にも類似の事件が報告されており、ホワイトハウスのジェフ・ワイルズ首席補佐官を装った偽の電話が、複数の上院議員のもとに届いていたといいます。このときもAIによる音声生成が疑われており、政府内では再発防止策が急務となっていました。
今回の件は、その延長線上にあると見られ、AIを悪用した「人格なりすまし型サイバー攻撃」が、政治・外交の分野にまで広がりつつあることを示しています。
こうした事案の再発を防ぐためには、国内法の整備だけでなく、国際的なAI規制ルールの構築が急がれます。特に、政府関係者や外交官などの「高リスクターゲット」を守るためには、音声認証や本人確認プロトコルの高度化が不可欠です。
一方で、生成AIは正当なビジネスやクリエイティブ分野でも多く活用されており、その「光と影」の両面を冷静に見極めた制度設計が求められます。
今回の事件は、外交という国家の根幹を支える分野においてすら、AI技術による偽装や欺瞞が現実の脅威になり得ることを示しました。情報の真偽を見極めるリテラシー、そして誤認を防ぐための技術的・制度的ガードレールの整備が、今まさに求められています。
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【記事注記】
本記事は、2025年7月9日時点での報道および米政府の公式声明に基づいて作成されています。内容には最新情報が含まれていない可能性があります。
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