2025年7月10日|FIXIO Markets
2025年7月8日、アメリカのトランプ前大統領は、輸入銅に対して50%の関税を課す方針を発表した。対象となる関税措置は、通商拡大法232条に基づく「国家安全保障上の必要性」を理由とするものであり、実施時期は7月末から8月1日までに導入される可能性が高いと見られている。
今回の関税は、外国産の銅への依存度が高まることで、電力インフラ・防衛装備・EV(電気自動車)などに必要な供給網にリスクが生じるとする、安全保障上の懸念に基づいている。通商拡大法232条は、国家安全保障への影響があると判断された品目に対し、関税や数量制限を課すことを認めており、これまでにも鉄鋼やアルミニウムに対する関税措置が取られてきた。
トランプ氏は同日、自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」にて声明を発表。銅は米国内の製造業や軍事産業に不可欠な素材であり、外国依存のままでは米国の安全保障を脅かすと警鐘を鳴らした。さらに同氏は、半導体、医薬品など他の重要物資についても、関税措置を近く導入すると明言しており、今後数週間の政策発表が注目されている。
この発表を受けて、ニューヨークCOMEXでは銅の先物価格が13%以上上昇し、過去最高値を記録した。専門家の間では、今後の供給不足や、サプライチェーンの混乱による価格高騰が続くとの見方が広がっている。
銅は電気自動車、送電網、建設、IT機器、軍用電子装備などに不可欠な基礎素材であり、世界的な需要が拡大している。このような制限措置が導入されることで、グローバルな銅流通が不安定になり、中国、チリ、ザンビアなどの銅産出国との外交・通商関係にも波紋を呼ぶ可能性がある。
トランプ氏は声明の中で、「1年または1年半の猶予期間を経た後、最大で200%の関税を医薬品に課す可能性がある」と発言している。この発言により、半導体および医薬品業界にも同様の保護主義的措置が及ぶ懸念が強まり、ヘルスケア・テック企業の株価にも影響が波及している。
住友商事グローバルリサーチの本間隆行チーフエコノミストは、「銅は自動車や電力設備、航空機、スマートグリッドなど、多岐にわたる産業で使用されており、米国内の価格上昇はサプライチェーン全体に大きな負担をもたらす」と指摘。さらに、「米国に工場を構える日本企業にとって、銅の輸入コスト増加は製造原価に直結するが、現在の米経済は価格転嫁を受け入れられるほど強くはない」とも述べ、慎重な価格戦略が必要であると示唆した。
日本政府の橘官房副長官は、記者会見において「米国政府による関税導入に関する報道は把握しており、具体的な措置内容と影響を精査のうえ、適切に対応する」と述べた。外務省および経済産業省も、今後の日米間の貿易・投資関係に与える影響について詳細に分析しているとされ、必要に応じてWTOルールに基づく意見表明も視野に入れている模様である。
今回の関税措置は、単なる経済政策ではなく、トランプ前大統領が掲げる「アメリカ第一主義」の延長にある国家戦略の一環である。銅という重要資源を対象としたことで、インフラ・自動車・軍事の複合領域への影響は計り知れず、今後の政権移行や選挙結果によっては、さらに広範な貿易政策の転換が想定される。日本企業および投資家は、単なる短期的な価格変動にとどまらず、中長期的な事業リスクとコスト構造の見直しを迫られる局面にある。
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トランプ前大統領が銅の輸入に50%の関税を発表。通商拡大法232条に基づき、国家安全保障を理由とする措置。EVや医薬品分野への波及、日本企業や市場への影響を解説。FIXIOブログ誘導・Wikipediaリンク付き。
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