イーロン・マスク氏は、2024年の大統領選でドナルド・トランプ前大統領の最大の個人献金者として知られ、政権内では政府支出の見直しを主導する重要人物でした。しかし、トランプ氏が主導した「ビッグ・ビューティフル・ビル」と称される国内政策法案が、数兆ドル規模の連邦財政赤字を増やすとされたことに対し、マスク氏はSNS「X(旧Twitter)」上で「これは債務奴隷だ」と強く非難しました。一時的に投稿の削除や謝罪も見られたものの、法案の可決が近づくと再び関係は悪化。7月5日、トランプ氏が正式に法案へ署名した翌日に、マスク氏は新政党の立ち上げを発表しました。
マスク氏はXで「この国はもはや民主主義ではなく、一党支配体制だ。我々が自由を取り戻すために、今日『アメリカ党』が設立された」と投稿。現時点では党の具体的な政策綱領は明らかにされていませんが、「財政保守主義」や「官僚主義・無駄の排除」などが中心になるとみられています。さらに、2026年の米国中間選挙において、一部の下院および上院選挙区で候補者を支援・擁立する意向も示しています。
これに対し、トランプ氏はニュージャージー州で「新党設立は馬鹿げている。共和党は大成功している」と発言。「我々は常に二大政党制であり、第三政党は混乱を生むだけだ」とも述べ、新党構想を強くけん制しました。さらにトランプ氏は、「政府はマスク氏の企業との巨額契約を見直すかもしれない」と発言し、圧力をかける姿勢を示しています。
新党の正式設立には連邦選挙委員会(FEC)への登録が必要であり、法的手続きや資金調達、選挙制度の制約など多くのハードルが存在します。過去にはロス・ペロー氏が1992年に第三政党として大統領選に挑戦し、得票率19%を得ましたが、州を一つも獲得できなかったという歴史もあります。政治学者らは、新党の長期的成功には草の根運動・明確な政策・地道な地方組織作りが不可欠だと指摘しています。
イーロン・マスク氏の新党結成は、米国政治における根本的な問いかけを内包しています。財政の健全性、政党の役割、有権者の自由意志といったテーマに改めて光を当てる動きとして注目されます。ただし、制度的・歴史的制約が多い中で、実際にどこまで浸透するかは未知数です。今後数か月間のFEC登録や候補者擁立の進捗が試金石となるでしょう。
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※この記事は、米国の政治動向に関する最新情報をもとに編集されています。内容は執筆時点のものであり、今後変更される可能性があります。
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