2025年7月3日、中国政府は急成長を遂げた国内の太陽光発電業界に対し、構造的な是正を目的とした方針を打ち出しました。中国工業情報省は、業界団体や主要企業との会合を通じて、古い設備の段階的撤退を求め、品質重視の体制づくりを指導する方針を正式に表明しました。
同国の再生可能エネルギー政策において、太陽光発電は中心的な役割を果たしてきましたが、ここ数年は供給過剰と価格破壊により業界の持続可能性が問われるようになっています。
中国の太陽光パネル製造業は、世界の生産量の約8割を占めるまでに成長してきましたが、その裏では無秩序な拡大と価格競争が常態化していました。特に、中小メーカーが低価格路線でシェア獲得を狙った結果、1枚あたりの平均販売価格はこの2年で30%以上下落。こうした流れは一部の大手企業にも影響を及ぼし、赤字決算や設備の遊休化が問題化しています。
工業情報省によると、このまま放置すれば業界全体の健全性が失われるとされ、今回の措置は「産業政策の転換点」として位置付けられています。
声明の中で李楽成・工業情報相は次のように述べています。
「市場の乱高下を防ぎ、品質基準を引き上げることで、太陽光発電産業をより競争力のある形で再構築していく。時代遅れの設備は撤退を促し、新技術導入を後押しする」
また、業界団体には「市場の健全性を守るための自己規律」の強化を求めると同時に、地方政府にも企業誘致や補助金配分の見直しを指導していくと明言しました。
政策発表を受け、太陽光パネル大手の隆基緑能科技(ロンジ)は、中国証券時報のインタビューで「高効率セル・パネルの量産化を一層加速する」と表明しました。特に、P型からN型への切り替えなど、次世代技術の導入に積極的な姿勢を見せており、「低価格戦略からの脱却」が業界全体の課題であることを認めています。
さらに、他の上場メーカーも類似の発言を行っており、今後は中小メーカーの淘汰と合併が進む可能性が高いと見られています。
中国のこの施策は国内問題にとどまらず、世界市場にも大きな影響を及ぼすと予想されます。特に、欧州や米国、インドなどの太陽光発電プロジェクトにとって、中国製パネルの価格・品質はプロジェクト採算に直結する要素です。
今回の措置によって、中国のパネル輸出価格が上昇する可能性があり、調達コストに影響を与える懸念も出ています。一方で、品質の向上は長期的には国際競争力を高め、脱炭素社会への貢献につながる側面もあります。
これまで「安価な太陽光パネル」の代名詞であった中国が、今後は「高品質・高効率」を掲げた製品で国際市場に挑む構えを見せています。政府と企業が一体となって過剰設備の整理に取り組む姿勢は、業界全体の成熟度を高める契機となるでしょう。
政策の実行力や地方政府との連携、企業の技術投資など、今後の進展が注目されます。特に世界市場への影響という点で、今後の中国の動向は再エネ投資家やエネルギー関連企業にとって重要な判断材料になるといえるでしょう。
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本記事は、中国の太陽光発電業界に対する政策動向を解説し、国際市場やエネルギー投資への影響についても注目しています。
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