トヨタ自動車、2025年度業績を4400億円下方修正 米関税の影響で1兆4000億円の打撃
トヨタ自動車は、2025年8月7日、2025年度の通期業績予想を大幅に下方修正すると発表しました。新たな予想によれば、純利益は前年から44.2%減の2兆6600億円に落ち込む見込みです。主因は、トランプ前大統領政権下で再導入された自動車関連の追加関税であり、年間で約1兆4000億円もの影響を受けると見積もられています。
トヨタは当初、4月〜5月の2カ月間のみの関税影響を想定していました。しかし、日米交渉の結果、追加関税が通年で継続されることが確定したため、影響額は約3倍に拡大。結果として、4400億円の業績下方修正に至ったと説明しています。特に米国市場は、トヨタ全体の売上高の約30%を占める重要な地域です。この市場での関税コスト増加は、収益構造全体を直撃し、北米事業が唯一の赤字地域となるなど、大きな痛手となりました。
トヨタは北米に複数の生産拠点を保有しており、これまでは現地生産によって関税リスクを回避してきました。しかし、部品の輸入にも関税がかかるため、サプライチェーン全体が圧迫されています。今後はさらに現地調達比率の向上が求められる中、トヨタは現地工場の投資配分や部品戦略の見直しを迫られることになります。
経営本部長の東崇徳氏は、「厳しい環境でも投資の手は緩めず、継続的な改善活動を通じて利益への悪影響を最小限に抑える」と強調。その象徴として、愛知県豊田市に新工場を建設する方針を発表しました。新工場は次世代EV車の生産も視野に入れており、自動車産業の電動化対応を見据えた布石と見られています。
世界の自動車市場では、EV(電気自動車)へのシフトが加速しており、トヨタも「全方位戦略」のもと、EV・PHEV・HEVをバランスよく展開しています。今回の業績悪化にもかかわらず、新工場建設に踏み切る背景には、国内の研究開発基盤を強化し、グローバル生産体制の柔軟性を高める狙いがあります。
今回の発表を受け、株式市場では一時トヨタ株が下落する場面も見られましたが、アナリストの間では「短期的な下押しであり、長期的には競争力維持のための戦略的対応」と評価する声もあります。関税という外部ショックに対して、リスク分散と内製化強化で対応する姿勢が、中長期的な評価に繋がる可能性があります。
愛知県への新工場建設は、地域雇用の創出や地元経済への波及効果が期待されています。2030年代の稼働を見据えた段階的な雇用計画が策定され、自治体との連携のもとでインフラ整備や人材育成が進められる見通しです。
今回の事例は、関税や政治的リスクが企業活動にどれほど重大な影響を及ぼすかを浮き彫りにしました。トヨタのようなグローバル企業にとっては、地政学的リスクと経済合理性のバランスをいかにとるかが、今後の経営における重要テーマとなります。トヨタが示す「国内回帰・現地最適化」戦略は、他の製造業にも広がる可能性があります。
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本記事は、2025年8月7日時点の公式発表および報道資料に基づいて作成されています。記載された数値や見解は公開時点のものであり、今後の市場動向や企業判断によって変更される可能性があります。最新情報については、企業の公式発表または信頼性の高い報道機関をご確認ください。
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